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25-11-06
特許登録となった製品を海外電子商取引プラットフォームに販売の目的で掲示した行為は特許侵害に該当する、という韓国法院の初めての判断がなされた。
特許法院は2025年5月22日、イタリア法人である原告(特許権者)が中国法人である被告を相手取って提起した特許権侵害禁止請求訴訟(2023ナ10693)で原告の請求を認容し、被告の特許侵害を認めた。具体的には、原告は、韓国で靴下編み機械に関する特許を取得した。一方、被告は、原告の特許発明と類似した機械を中国で生産し、中国の電子商取引プラットフォームと中国にサーバーがある自社ホームページに掲示して広告・販売してきた。そこで、原告は、被告が生産した機械は自身の特許発明の権利範囲に含まれ、被告の前記掲示及び販売行為は特許法上の実施行為の一つである「譲渡の申出」に該当し、特許侵害に該当することを主張した。今回の判決では、本件の国際裁判管轄が韓国の法院に存在するかどうかと、本件の準拠法、そして海外電子商取引プラットフォームへの製品の掲示行為が韓国の特許権を侵害することができるかどうかが主要な争点となった。
まず、特許法院は、国際司法第2条第1項及び第39条第1項に基づき、韓国法院は本件について国際裁判管轄を有すると判断した。国際司法第2条第1項は、「大韓民国法院は当事者又は紛争になった事案が大韓民国と実質的関連がある場合に国際裁判管轄権を有する。」と規定し、国際司法第39条第1項は、「知的財産権の侵害に関する訴えは、次の各号のいずれかに該当する場合、法院に提起することができる。」と定めつつ、「侵害の結果が大韓民国で発生した場合(第2号)」及び「侵害行為を大韓民国に向かってした場合(第3号)」を規定している。特許法院は、国際司法第39条第1項第2号及び第3号に基づき、韓国法院が本件と実質的関連性があることを認めた。また、特許法院は、国際司法第40条の「知識財産権の保護はその侵害地の法律に従う」という規定に基づき、本件の準拠法は大韓民国の法律であると判断した。
海外電子商取引プラットフォームへの製品の掲示行為に関連して、特許法院は、被告が中国の電子商取引プラットフォームと中国内にサーバーがある自社ホームページを通じて広告・販売をしたものの、その行為は、韓国の消費者を直接対象とした販売誘導に該当し、特許法上の特許発明の実施行為の一つである「譲渡の申出」に該当するため、原告の特許権を侵害したと判断し、原告の侵害禁止請求を認容した。具体的には、特許法院は、被告の行為が韓国の特許権を侵害するかどうかの判断にあたり、ⅰ)ウェブサイトで商品情報を韓国語で提供しているか、ⅱ)韓国内で商品の注文と受取が可能であるか、ⅲ)韓国の通貨(ウォン)で決済することができるか、ⅳ)韓国の消費者に商品購買に関する問い合わせ窓口、相談などの便宜を提供しているかなどを総合的に考慮した。
今回の判決は、国外オンラインプラットフォームを介した取引が日常化した現実を反映し、オンライン取引環境での知的財産権保護及び紛争リスク管理の側面で実効的な基準を提示したことに意義があると言える。また、韓国市場を対象に製品販売やマーケティングをしようとする海外企業の立場においては、競合他社のオンライン販売への牽制だけでなく紛争リスク管理の側面から韓国での特許権確保が戦略的に一層重要となるものと思われる。